経営支援は、遺跡発掘に似ている
経営支援は、遺跡発掘に似ている。
ここがあやしいとアタリをつけて試掘する。遺跡が見えてきたら、本格的に掘削して、全貌を明らかにする。もちろん、遺跡が出ないこともある。
以前、中小企業支援に携わる人たちの事例発表会に参加した時、発表者の多くが「なぜその課題なのか」を簡単にスルーし、「その課題解決に向けてどんなサポートをしたか」「事例企業の取り組みは具体的にどんな内容だったか」に大半の発表時間を費やすことに違和感を禁じえなかった。
そして多くの人たちが「まず真の課題を把握して…」というフレーズを口にすることに驚いた。
真の課題は「まず最初に」見つかるものなのか
驚いた理由は、相手先企業の経営者や従業員の話を聞くだけで真の課題が見えるなどということは、私の経験では、ほとんどないと思うからだ。
よほど能力の高い人たちだったのか、それとも迂闊な人たちだったのか。
支援の最重要ポイントは、現場のどこに着目し、どんな情報から問題を把握して、どんな課題を設定したかにあるのであって、極論を言えば、その後どう課題を解決したかは、付け足しに過ぎない。
現場も見ず、マーケットやサプライ・プロセスの独自調査もせずに、相談者に対するヒアリングだけして「まず真の課題を把握して…」と豪語する人たちを見ると、「あんたはエルキュール・ポアロか?」と訊きたくなる。
判断するに十分な情報が揃わないままで、「真の課題」などというものが見つかると思うとは、なんて楽観的なんだろう。
ファーストタッチで明らかにすべきこと
とはいえ、いつまでも「何が問題か」を保留するような人物は、相談相手として不足であろう。
私自身は、ファーストタッチで「直感的には、問題のありかはここら辺だと思います」と指摘し、どのようなステップを踏んで「経営者や従業員の人達と一緒に」問題を特定していくのか説明する。
真の課題がじつは思わぬところにあった、という経験のない人がいたとしたら、課題設定を急ぎすぎて視野狭窄に陥っていないか、一度自分を疑ってみたほうがいい。
もちろん、様々な制約から、「当面の措置として」取り急ぎ課題設定をしなければならないこともあるだろう。しかし、その場合でも、その課題解決は、何らかの一点に収斂するようなものでなくてはならないはずだ。それが見えているか、いないかの差は、いずれ大きな実力差として人の目に映ることになるに違いない。