NO.5 面積の大きな土地はなぜ安いか?

面大地(面積の大きな土地)は、一般にその地域の標準的な画地規模の土地に比べて単価が低くなります。これを「面大減価」と呼んでいます。

逆に、東京都心部などでは、面大地が周囲の規模の小さな画地よりはるかに高値で取引されることがしばしばあり、これは「面大増価」と呼ばれます。

 

では、面大減価や面大増価はなぜ起こるのでしょうか。以下に、質的側面と量的側面に分けて説明を試みます。

60坪(200㎡)が標準的画地である地域に、360坪(1,200㎡)の面大地があるとします。この面大地の単価を標準的画地との比較においてどう考えればよいでしょうか。

質的側面からみると、面大地は一般に高層建築が可能で、有効利用上大きなメリットがあります。もしこの地域でマンション需要が強い状況にあり、かつマンション建築に適した条件(形状や行政上の規制の程度など)を備えていれば、当該地域における面大地の希少性にもよりますが、質的には高い評価となるでしょう。もっと細かいことをいえば、マンションデベロッパーの立場からみて、市場環境に照らして360坪が最適な開発規模であるとき、質的に最も高い評価となるでしょう。

マンション分譲は難しいが、区画分譲なら…というような郊外の面大地であれば、区画割したときのレイアウトや取付道路・公園緑地などを配したときの有効宅地化率、開発コストなどにより、質的評価が変わってくるでしょう(例えば、幅員6mの既設道路に面した間口100m、奥行16m、面積1,600㎡の面大地があるとすると、間口12.5m・面積200㎡の8区画に分割すれば、有効宅地化率は100%ですから、分割利用に有利です)。

 

一方、量的側面からみると、面大地は総額が大きくなるので、需要者(市場参加者)は資力があり、開発ノウハウのある主体に事実上限られることになります(360坪の土地をサラリーマン世帯が買い求めることは考えにくいことです)。

 

また市街化区域では、1,000㎡以上の規模の開発行為には開発許可を要するため、需要者がさらに限定されてしまうこともあります。例えば近隣に950㎡の土地と1,050㎡の土地があったとすると、後者は開発に時間とコストを要するため、前者より市場での評価が低くなりがちです。

 

このように、面大減価・面大増価に関しては、対象となる面大地の質的・量的側面にそれぞれ着目して、増価要因と減価要因を検討した結果、増価要因と減価要因のいずれがどれだけ優るかを判断する必要があります。前者が優る場合は面大増価が生じ、後者が優る場合は面大減価となるわけです。

 

これを冒頭に記した「東京都心部などでは、面大地が周囲の規模の小さな画地よりはるかに高値で取引される」という現象に即していえば、高度利用のメリットが大きければ大きいほど、質的なメリットが量的なデメリットを上回ることになるので、面大増価が発生する、ということになります。

 

したがって、標準的画地の〇倍の面積になると単価は□%下落する、などと一概には言えませんし、同一近隣地域に360坪(1,200㎡)の面大地が複数あるとして、それらの面大減価・面大増価は同じになるわけではありません。

 

分譲マンションなど一体利用に適している地域なら、どちらの土地のほうがより適切な建物レイアウトが容易か、どちらのほうがより大きなボリュームの建物建築が可能か、といった比較が必要ですし、区画分譲など分割利用に適している地域なら、どちらの土地のほうがより適切な区画割ができるか、どちらのほうが有効宅地化率が高いか、といった比較が必要になります。いずれもポイントは、開発業者の視点に立つことです。

 

これら質的検討と量的検討を併せてはじめて、面大減価・面大増価の程度を判定できるというべきでしょう。

 

ところで、不動産鑑定評価の手法の一つにいわゆる「開発法」というものがあります。これは、面大地においてマンション分譲や区画分譲などを行うことを想定し、土地価格を逆算して求める手法です。これこそまさに、開発業者の視点で面大地の質的・量的側面を捉え、価格を求める考え方といえます。

 

→エリア・サーベイ合同会社の「不動産購入・売却検討サポート」をみる